今年は、COVID-19が広がり、東日本大震災に関するイベントなどを開催することができませんでした。予定では、福島県南相馬市のこども園の園長先生をお呼びして、現在の福島のお話を伺うはずでしたが、それも叶わず・・・原発事故から9年。今の福島の状況はどうなのでしょうか。
震災後、アーユスが協力した事業のひとつが、伊達市月舘にある野菜の直売所「つきだて花工房もりもり」に、農産物の放射線量を測定する機械の支援でした。近隣の農家さんが持ち寄った新鮮な野菜や、季節毎に採れる山菜やキノコが売りの直売所。原発事故が起きた後は、ただただ途方に暮れ、一時は閉所も考えたそうです。そこで、測定器のことを知り、放射線量をきちんと計って伝えることで、お客さんとの信頼関係を取り戻そうと思い、協力先を探し始めたところでアーユスと出会ったと聞きます。
当時の話はこちらをご覧下さい。2012年のインタビュー記事です。
当時はこの機器自体が品薄で、発注してから半年後の納品。納品されてからは、持ち込まれる野菜は全て畑毎に測量し、ベクレルフリーであればシールを貼って販売するようになりました。これも2017年に、野菜からはほぼ出ないことがわかり、定点的な測量と山菜など値が高い物の測定に限られるようになり、今に至っています。
この地域の特産の一つが「あんぽ柿」。硫黄で燻製した、柔らかくあまーい干し柿。原発事故後しばらくは出荷禁止だったのが、何年か前に集荷できるようになったと一箱送ってくださったので、てっきり出荷できるようになっていると思っていました。しかし、実際はまだ加工自粛が続いています。福島市、伊達市、桑折町、国見町のみ出荷販売が可能ですが、全品検査を受けなければいけません。また、加工に使ってよい柿も同市町原産のもののみであり、以前のように多地域から取り寄せて作るのはできないとのこと。つまり、9年経っても、農家さんはいまだに生産出荷が、自由にできるわけではありません。
もうひとつの特産品である、山菜やキノコももちろん出荷できません(ハウス栽培は除く)。つきだて花工房のみなさんも、状況は落ち着いているように見えるかもしれないけれど、実際はまだまだ影響は続いている、そんな中、特に高齢の農家さんの中には農業を続けられずに辞めた方もいるとおっしゃっていました。
2011年に原発事故が放射性物質を広範囲にわたって振りまいた影響は、まだまだ続いています。目に見えるものではないけれど、たくさんの人たちの暮らしを、そして人生を変えたのは確か。
来年の3月で10年を迎えますが、この間に変わったこと、変わらないことを、またお伝えしたいと思います。(M)